スタンフォード大学留学時代

大学院の学位の知識も

※ アメリカ留学を考えてみたい人は、日米教育委員会(フルブライト委員会)をどうぞ。また、外国語英語統一試験(TOEFL)の受験準備、出願もしなくてはなりません。

「あなたも留学?」 第5項追加 (2004/02/09)


あなたも留学?

大学院の修士課程(Master Course)・博士課程(Doctor Course)への入学(学部への留学はここではとりあげません)。

1.  いずれも、学位
  a) 修士号(Master's Degree)
  b) 博士号(Doctor's Degree)
をとるための留学で、向こうの大学の正規の入学手続きによって学生(大学院生)になることをいいます。
 これ以外はふつう「留学」とはいいません。例えば、日本の大学に籍をおき「サマースクール」へ行くということは、確かに価値のあることですが、行く先の大学の学生になることでなく、もちろん卒業生になるのでもありませんから、「留学」とはいいません。もちろん「海外で勉強をする」ことを「留学」というなら広い意味ではそうです。
 これは、履歴書の「学歴欄」(職歴欄は別)にのるような留学は相当の努力とお金と年月および覚悟が必要ということを強調するためです。一種の人生の事業なのです。
 修士は通常 2 年間、博士は一般には数年を要します。日本人では 20 歳代の中頃から後半にかけて留学する人が多いようです。なお、アメリカの大学には留学生の入学自体に年齢制限の規則はありません。

2. 「博士号」は一般に Doctor of Philosophy(Ph.D.)と呼ばれます。「哲学」とはかかわりなく、習慣で一般にこう呼ばれます。なお、法律、医学では別の呼び方をすることがあります。
 キャリアとしての研究者、大学の先生になるためには、これからは「博士号」が国際的に必要とされてきつつあります。いわば「運転免許証」「パスポート」でしょうか。もちろん、必ずというわけではありませんから、なくても無免許となるのではありませんが、ないと不必要に技量が問われることがあるのです。
 ハイレベルの大学のPh.D.は全世界に問題なく通用します。

統計学博士号の学位記 (博士号の授与証明書)

 
松原望博士論文(スタンフォード大学)
「一般的なレーマン対立仮説の検定法」
  論文に博士号を認める審査教官4名の署名

3. 通常は,日本の大学卒業後に留学します。すなわち、
  a) 日本の大学院(修士課程,博士課程)修了後あるいは在学中に
  b) 企業から派遣(企業によってサポート条件有り)
  c) 大学卒業直後
a), b)が多いようです。

4. 手続・方法(アメリカの場合)
 アメリカの大学にはいわゆる大学院入試はありません。一般に、入るのは出るより容易です。出るのが大変なので、入学のときからその厳しさが伺われてしまうのです。次の手続が必要。

a) 推薦状 : 数人(本人の能力をよく知っている人が要求され、そうでないと信用されません)。皆さんと仲良くしてくれる教授が 2, 3 人いないとムリ!

b) 成績証明書 : もちろん英語のもの(日本の大学にあり)。日本の大学の成績がある程度よくないと留学はできません。

c) 能力試験 : ほとんどの場合要求され、いずれも日本で受けられます。

     TOEFL(一種の統一英語試験)
     GRE, SAT(一種の統一基本知識試験で、卒業レベルのセンター入試と考えてよいでしょう)
                 TOEFL = Test of English as Foreign Language
                 GRE = Graduate Record Examination
                 SAT = Scholastic Aptitude Test
     TOEFL は一般にはレベルが高く、日本人には難関とはいえないまでも相当に苦労するのが普通です。つまり、英語力がハードル。
     信頼できる筋によれば、ハーバード大学の場合、学部 600, 大学院 550 が必要条件だそうです。十分条件は当然これより上でしょう。
     スタンフォードの場合想像ですが 600 を越えるでしょう。

d) 学費(tuition)および生活費の確保 = お金

大学にもよりますが相当に高額です(年間10,000ドルは安い方)。逆にいうと、高いだけの事はあるのです。
なお、アルバイトは移民局の許可無くしては原則的には違法ですが、大学のためとして大学から認められたものは例外。先生の研究補助、学部点数付け、雑務。いずれにせよ、アルバイトで1万ドル以上を稼ぐのは不可能。

(i) (a)(c)の成績によっては免除(つまり奨学金)。競争は極めて厳しい(competitive)。

なお、奨学金はスカラシップ(scholarship)といいますが、アメリカの場合は、貸与制奨学金はほとんどなく、給費です(ただし、これは私の経験の範囲です)。

(ii) 日本の奨学金の獲得

フルブライト(日米教育委員会)奨学金、ロータリー・クラブなど。
前者は相当に competitive。ほかにも諸団体の奨学金があるが、ほとんどは定員 1, 2 名程度。

(iii) 自費。

もちろん、入学が認められたとしてですが、高額だから大変。2, 3 年目が続かないと、生活費から兵糧切れになり帰国となるので、真剣に考える。

(iv) アメリカの奨学金

フォード財団、IMF(国際通貨基金)等あり。極度に competitive。考える人は少ない。

 以上の要素の中では、a)が決め手であることは間違いないが、c)で挫折する人は多いので、努力の蓄積が重要。d)はアドバイスは千差万別であるが、準備期間が長ければ、解決不能ではない。

5. 大学院の履歴書の書き方・見方(日米である程度の差があります)

 大学院には「卒業」という概念がなく、次の3ケースとなる。

a) ○○修士(博士)課程修了 ○○修士(博士)

 i) 必要単位を取得し、
 ii) 修士(博士)論文執筆の資格を認められ、
 iii) それを執筆し、
 iv) その論文が学位審査をパス
し、その結果その大学の○○修士(博士)号を大学から正式に認定されるケース。その証明として正式文書(学部の場合の「卒業証書」)である「学位記」を授与される。

 これが、真正な「留学」である。この者はその大学より「□□大学○○修士(博士)」と称することが公に許可される。当然「学位記」(後の例参照)を証明として保持しており、求められた場合これを呈示しなければならない。次に、以下は完全な意味で「留学した」といえない場合で、俗にいう「中退」である。

b) 単位取得退学

 必要単位は取得したが、修士論文(修士課程)あるいは(博士課程)が書き終わらない、あるいは書いても学位審査をパス出来ない場合。引き続き在籍することは年限以内ならば可能だが、何らかの理由から自主的に退学願を提出するケース。これは次のケースを除き一般には不本意な結果だが、下のc)よりはベターな終わり方であろう。

 なお、博士課程在籍中に研究上の職に就職できた場合、博士論文完成・審査合格が時間的に後になるケースもこのようによばれるが、このことは本人の能力を示す好意的ケースと見られる。ただし、就職できても、博士号が取得できていない状況は、経歴上ハンデとなることがふつうである。 

c) 満期退学

 事実上の除籍(強制的退学)で、在学年限が満了したにも関わらず、必要単位が取得出来ない場合(したがって論文執筆の資格も認められない)。本人の学力、熱意・努力不足のほか、病気・事故、経済的理由などが考えられるが、一般には不本意な終わり方であろう。

*) 「単位を取得する」とは、その科目に登録し(「履修申請」という)、講義、演習、実習に出席し、しかもその科目の試験で合をとることをいう。場合により、単位の取得までも含め「××概論を履修し・・・」といういい方をすることも多い。つまり、一般には教室にいて講義を聴くだけでは正式・真剣な学び方とはいえない。 ただし「聴講生」(auditor)として、部外者が(米国では在籍者でも許されるケースがある)例外的に特別に許可されて講義を聴く制度もあるが、いずれにせよ聴講生は「お客さん」「見物人」という性格が強く、もちろん単位は与えられず、「留学生」とはいえない。


スタンフォード大学統計学部) 留学時代に

大学院寮にて 厳しい勉強の合間には旅行も
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余裕ができ、サンフランシスコ
日本人学校で子供たちと。
(左から3人目/1971年2月)