1998 年度 夏学期 試験問題 (1998.7.27)


松原(望)教官         98「計量社会科学」(夏)試験 1998.7.27

テキスト、自筆ノートのみ持ち込み可。電卓および簡易なマニュアルも可。

[全般的注意] 数理的・論理的展開能力を見ているので、エッセー風のみの解答
には低い評価しか与えられない。数理的概念、そのモデルを述べるときは、記号・
式の定義ないしは意味、必要な図、表などを必ず添えること。重要事項につきテキ
ストを引用する場合は、ページ、式・図・表番号を示すことが望ましい。

1. 次の概念・命題を数理的に(式で)簡潔に記述しなさい。数値例でもよい。
   i) 社会選択における市民主権
   ii) エントロピーが減少することはほとんどあり得ないこと(熱力学の第二法則)
   iii) 遊休資源のシャドウ価値
   iv) 産業連関における乗数効果

2. パレート原理について、
   i)定義 ii)その思想的意義 iii)批判
  を簡潔に述べなさい。

3. 囚人のディレンマ・ゲームにおいて、一方がC、他方がD戦略をとっている
  状態はパレート最適点である。
   i) ゲームの定義からこのことを確認しなさい。
   ii) この状態には多くの望ましくない問題がある。「均衡点」「公平」「フリー・
     ライダー」その他の理論上の重要語句を用いてこの問題を簡潔に論じなさい。

4. 次のゲームにおいてI は先手、IIは後手である。ゲームを展開形に表現し
  なさい。各分岐点(戦略の選択点)において戦略が最適に選ばれる場合に、
  実際に起こる最適戦略(シュタッケルベルグ均衡戦略)の経路を図中に太い
  実線で書き入れなさい。

                p.42 表2.5

5. 次の微分方程式モデルにおいて定常点を求め、さらに何かの理由でシステムが
  この定常点からわずか逸脱したときに、システムが将来においてたどる経路に
  つき(安定性)大まかに論じなさい。数値例でよい。
   i) ロジスティック成長モデル
   ii) ロトカ・ヴォルテラのモデル
   iii) リチャードソンの軍備モデル

6. アメリカ・ネヴァダ州には一部に最高速度規制がないハイウェイがあり、
         DRIVE AT YOUR OWN RISK
  という標語の標識があるだけである。この事から発想して、規制緩和の是非、
  規制緩和の時代における個人のリスク負担について論ぜよ。
     ヒント:risk averter, risk lover(taker), risk premium

[レポート出題] これは試験成績に考慮します。

A. 「交渉のコア」について簡潔に述べなさい。
B. 2証券のポートフォリオにおいて、分散最小のポートフォリオがもとの
  構成有価証券のいずれよりも小さい分散を達成できる条件を求めなさい。
C. 産業構造(例として第一次産業従業者比率)と自民党支持率の関係を
   i) 散布図を描き相関係数を計算する
   ii) 前者から後者を予測する回帰方程式を計算する
  ことにより分析しなさい。データは計量社会科学ホーム・ページを参照。
    URL http://sir.c.u-tokyo.ac.jp/qmss/
     ヒント: i)の相関係数はテキスト第4章、ii)の回帰直線はどのような
         統計学の教科書にも載っている。 
D. 「リー・ヨークのカオス」の定義のうち、SDICとは何か。

締め切り   9月4日(金)
提出先    教務課