2001年度計量社会科学
第2回レポート(ゲーム)

略解


1 表 2.5(p.42)のゲームにおいて、II を先手、I を後手として、シュタッケルベルク均衡を展開型に直して求めなさい。逆向き推論 backward induction を用いること。

先手 II の手で 3 通り、それに対して後手 I の手で 3 通り。計 9 通りをツリー(樹)のように表現する。まず後手 I から選んでゆく。I によって選ばれない枝は(ケシゴムで!)消すのがコツ。I の行動はこれであらかじめ完全に予測されるから、あとは II が自分の利得から選ぶが、これは容易(本項正誤訂正済み)。

2 三人から成る議会があり、歳費(議員の給与)の増額法案が提案されている。各議員はこれに賛成したいが、選挙民の反発が恐しい。増額の利益を b、反発されることのマイナス(コスト)を c とし、b > c である。議員 1, 2, 3 はこの順序で投票し、投票は順次明らかになるものとし、また、議決は過半数によるとする。展開型ゲームで「逆向き推論」 backward induction により、各議員の最適戦略(賛成・反対)を求めなさい。この結果についてコメントしなさい。

ツリー型(展開型)にする。たとえば(賛、賛、賛)の枝なら、3 人の利得(b-c, b-c, b-c)をこの枝先に書き付ける。また(反、賛、賛)なら(b ,b-c, b-c)。ここで議員 3 の選択(4 ヵ所ある)はこれらの利得の第 3 座標でそれぞれ決まり、選んだ以外のものは消す(等)。答:(反、賛、賛)。早い者勝ちでコストを後の者に押し付け。

3 次の利得行列で定義される 2 人ゼロ和ゲームの、マクスミン戦略、マクスミン値、ミニマクス戦略、ミニマクス値を求めなさい。

9 -1
4 12

p = 4/9, q = 13/18 の混合戦略が最適戦略で、ナッシュ均衡点(値は 56/9)。

4 「囚人のジレンマ」において、(3 カ月, 10 年)、(10 年, 3 カ月)の状態はともにパレート最適であることを示しなさい。

(3 ヵ月,10 年)を他のすべての状態(10 年, 3 ヵ月)、(1 年, 1 年)、(8 年, 8 年)とそれぞれ比べる(3 通り)。それぞれの比較においても、両プレーヤともに(3 ヵ月, 10 年)よりも好むものはない。

5 あるゲーム理論的意味で、「チキン・ゲーム」と「両性の闘い」は類似しており、「囚人のジレンマ」はこれらと似ていない。どのような意味においてか。

前 2 者では、ナッシュ均衡点はパレート最適点と一致し、2 通り。後者はそれぞれ 1 つ、3 つあり不一致。実際、ナッシュ均衡点はパレート最適点の中になく、パレート劣位である。

6 逆需要関数が
          P (q) = 30 - 2q,
複占企業 I, II の限界生産費がそれぞれ 10, 12 の場合、各最適反応戦略、クールノー均衡(最適生産量)、均衡価格を求めなさい。

テキストと同様の計算。均衡生産量は(11/3, 8/3)、計 19/3。均衡価格は 52/3。

7 開発ゲームにおいて農家 F のシャプレー値を求めなさい。すなわち、F の入っている提携(これを K とする)について、F が K から脱退した場合の特性関数 v の値の減少額を計算し、次のウェイト((3.11) による)で加重平均しなさい。

K のメンバー数 ウェイト
k = 1 1/3
k = 2 1/6
k = 3 1/3

  同じく企業家 M, 分譲業者 S についても求めなさい。

F, M, S のシャプレー値 = (650/3, 50/3, 200/3)×100。M のそれが小さい。

8 開発ゲームのコアにおいて、企業家 M への配分は 0 であった。特性関数 v の値を適当に修正してこの配分が正になるようにしなさい。1 通りでよい。なお、優加法性に注意すること。

v ({F,M3}) = 280,000, v ({F,6}) = 200,000 と修正し、F に対する交渉力を M, S 間で逆転させる、あるいは v ({F,S}) = 250,000 として、S だけを弱めるなど。

9 * 教授と学生の試験ゲームを、フロッピー・ディスクの 2 企業のゲームと数学的に同一であるとして、展開型におけるサブ(部分)ゲーム完全均衡戦略を求めなさい。

学生が勉強すれば教授は試験を行わない。勉強しなければ試験を行う。無条件に試験を行う(行わない)戦略はサブゲーム完全ではなく、このままでは信憑性なし。

10 * 国際政治におけるゲーム理論の適用例を一つあげ、簡単な解説を与えなさい。

 [ヒント] ホームページあるいは『ゲームとしての社会戦略』参照.。
      http://www.qmss.ne.jp/portal/
      http://www.qmss.ne.jp/author/pubs/maruzen/

キューバ危機、第一(二次)ベルリン封鎖、ミュンヘンの宥和、OPEC カルテルの崩壊など。


レポート一覧