2001年度 計量社会科学
第4回レポート(社会システム)

略解


1 マルサスの人口論のシステムを一般的な数式で表現してみなさい。必要な定数(パラメータ)については自分で記号(例えば a, b, c,・・・など)を用いること。また、その記号の意味を書くこと。つぎに、それらのパラメータに数値をあたえ、人口が食物生産を超える時期 n* を求める方程式を書きなさい。それを解く必要はないが、全体の様子を説明する図を添えること。

例:生活資料(食料) = 100+2n, 人口 = 20 (1.1)^n。 後者が前者を超えるのは方程式 100+2n = 20 (1.1)^n の解以後。

2 i) X 銀行では、金利 2.5%および 3%の 2 種類のローンを売出している。1500 万円のローンを、それぞれ返済期間(m)
   5 年、10 年、15 年、20 年、25 年、30 年
で割賦返済するための一年間の支払額(B)を表にして顧客に見せたい。2 通りの金利ごとに B の表を作りなさい。[本問、自習で可能]
  ii) 5 年で返済の場合、1, 2, 3, 4 年目の残債を金利ごとに求めなさい。

i) p.161 の公式 (1.9) そのまま。
ii) (1.8) で a0 = 1500, i = 0.025, 0.03, B = 322.9, 327.5万円(それぞれ)の場合となる。

3 差分方程式 (2.1) の d) を一般の n に対し解きなさい。初期条件は a0 = 3, a1 = 0 とする。つぎに n = 1, 5, 10 に対して解 an を求めなさい。

特性方程式の 2 解はα = -1/2, 1 で、一般解は c1・(-1/2)^n + c2。初期条件から c1 = 2, c2 = 1 と決まる。n = 1, 5, 10 に対しては 0, 0.9375, 1.001953125。

4 成長の微分方程式
   i) dx/dt = 3x   (指数成長),
   ii) dx/dt = −x   (指数減衰),
   iii) dx/dt = 3x−x2  (ロジスティック成長)
を、初期条件 x (0) = 2 で解きなさい。x(1), x(2) などの値を求め、その形を書きなさい。概略の形でよい。ただし e = 2.72 とする。

x(t) = 2exp(3t), x(t) = 2exp(-t), x(t) = 3/(1+(1/2) exp(-3t))

5 2 国の「リチャードソンの軍備モデル」(3.3)を学び、それを要約して、その安定条件(p.180)の証明、およびそれが意味する所をのべなさい。また、この軍備システムが
   i) 不安定になるケース、ii) 安定であるが安定点の周りに周期変動が生じるケース
を、それぞれ 1 例ずつ連立微分方程式(定数項を含むこと)で表現しなさい。

αβ< kl ととれば一解(固有値)は正で、不安定。k, l は絶対値を十分大きく負ととる(均衡点は正)。
後者としては、α = 2, β = 1, k = 1, l = -1(テキスト)の場合で、固有値は虚、その実数部は -3/2 で負。

6 「ロトカ・ヴォルテラの捕食者-被食者モデル」(1.22),(1.22') の図示(図5.5a)において、曲線部分のおのおの
   i) 右上, ii) 左上, iii) 左下, iv) 右下
の各局面で起こっていることがら(現象ないしは状況)を説明しなさい。捕食者、被食者は「オオカミ」「ヤギ」で代表してよい。

右上:オオカミがヤギを捕食する、左上:ヤギが僅少となりオオカも減少、
左下:オオカミが僅少のためヤギが繁殖、右下:ヤギが増加したためオオカミも増加

7* 「リー・ヨークのカオス」(5.1) で、初期値のわずかに異なる 2 つのケース
   0.5, 0.50001,
について、an の値は n が大きいときどのように異なるか(あるいはそうでないか)、
   r = 2.5, 2.9, 3.0, 3.57
の 4 通りについて定性的に[ことばで。解かなくてよい]論じなさい。このことの意味は何か。(optional)
   [ヒント] 倍周期分岐、ファイゲンバウム定数、SDIC

前 4 者では結局同じ挙動になるが、r = 3.57 では挙動がまったく異なり、初期条件に強く依存する(はず)。[r がファイゲンバウム定数 3.569446・・・に非常に近いため、実際は理論どおりの観察にならなかったようです。r = 3.9 で試すとハッキリする。 ]


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