公理 U, P, ND は比較的理解しやすいので、いわゆる公理 I : 無関係選択肢からの独立性(Independence of irrelevant alternatives)について解説します。この公理はけっこう強いことを要求しているのです。
まず、選好順序を最も選好されるものから 1, 2, 3 などのように順位であらわすものとしましょう。下表のごとくです。ここで、得点順位法(ランク・オーダ法)とは、社会的選好をこれら順位の和によって決定する方法です。あるいは、ボルダ得点の方法ともいいますが、しばしばわかりやすいので簡便に用いられる方法です。
下表で、表 1 から表 2 への変更は各個人の x, y に対する選好を変えないにもかかわらず、(z の順位により)社会的選好を変えています。すなわち、得点順位法は無関係選択肢からの独立性の公理を満足しない方法です。
表 1
選 択 肢 | |||
x | y | z | |
I | 1 | 2 | 3 |
II | 2 | 1 | 3 |
III | 2 | 3 | 1 |
表 2
選 択 肢 | |||
x | y | z | |
I | 1 | 2 | 3 |
II | 2 | 1 | 3 |
III | 1 | 2 | 3 |
出典:根岸 隆『ミクロ経済学講義』東京大学出版会
K.Arrow, p.26 et seq.