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 では、これを元に、どのように戦略を決定したか。

 最初に出てくるのは「損失(被害)を最小にする」という考え。「最高の結果が得られる可能性があるが、相手の作戦次第では大きな損失を受ける危険性もある」というような"バクチ的"作戦は、実戦の場合選択できないのである。そこで、評価値 1 の結果を生むような〈東方への移動〉という作戦はまず除外する。

 次に評価値 2 を含む〈補強作戦〉も消えることが分かるだろう。こうして残るのは〈1 日間待機〉作戦である。ここで注意が必要なのは〈ドイツ軍包囲〉というベストの結果が期待されるから、この作戦を選んだのではない点。各作戦の中で、起こりうる損失を最小に押さえられる作戦が現実に重要なのである。

 このように「各選択のなかで起こりうる最小値(minimum value)」(図の上から 2, 1, 4)を求め、その「最小値の中の最大値(maximum value)」として求められた 4 をマックスミン値(maxmin value)という。

 ドイツ軍のフォン・クルーゲ司令官は、ちょうど逆の考え方をした。ドイツ軍として考えられる作戦ごとに最大値を求め、そのなかの最小値の 4 を得た。これをミニマックス値(minimax value)という。取るべき作戦は〈退却〉であったのだ。

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