2002年度 計量社会科学
第3回レポート(不確実性)

7月1日出題、7月15日提出


1 「つぼのモデル」を次のように変える:

つぼ U1 には赤:白=1:1000,つぼ U2 には赤:白=1:1で、いずれも無限個の玉が入っている。

いま、U1,U2 のどちらかを 1 つランダムに選び、どちらが選ばれたかを知らないままに、そのつぼから玉を 1 つ抜いたところ、赤玉であった。その玉はどちらのつぼからのものか、それぞれの可能性を確率で表わしなさい。適当に仮定をおいてよい。白玉の場合はどうか。このモデルは原子力発電の安全性に対する社会的信頼性をあらわすことに用いることができる。これを説明しなさい。

2 ある会社が、暖房器具の生産規模を決定しようとしている。可能な選択肢は次の 4 つである。a1) 工場を新設し大幅に生産能力をあげる。a2) 現在の工場を拡張し、かなりの生産能力をあげる。a3) 新鋭機械を導入し、やや生産能力を高める。a4) 現在の生産設備をそのまま使う。決定の際に考慮すべき要因として冬期の天候がある。関連する不確かな事象として、θ1) 例年より寒い、θ2) 例年なみ、θ3) 例年より暖かい、とする。
 その結果は、今年度の実績と比べた利益の増減で表される(表は、架空の値で、金額の単位も随意である)。

  a1 a2 a3 a4
θ1 100 50 30 20
θ2 0 10 40 20
θ3 -60 -20 10 20

(出典:繁桝)

 便宜上、各結果の効用は金額と同じであるとする。サヴェジの基準による最適行動を求めなさい。

3 次の宝くじの確実同値額を効用関数 u(x)=√x に対して求めなさい。

等級 当せん金 本数
1等 40,000,000 円 7 本
1等の前後賞 10,000,000 円 14 本
1等の組違い賞 200,000 円 903 本
2等 10,000,000 円 5 本
2等の組違い賞 100,000 円 645 本
3等 1,000,000 円 130 本
4等 140,000 円 130 本
5等 10,000 円 1,300 本
6等 1,000 円 26,000 本
7等(末等) 200 円 1,300,000 本
  13,000,000 本

4 保険の加入・非加入の比較、選択を「くじ」の形(p.86 の図)で論じなさい。「保険」は「賭け」(gamble)ではないこと、および保険の本質について述べなさい。

5 p.87 の a1, a2, a3, a4 に対して、「アレーのパラドックス」が生じることを、U (15,000)=x, U (10,000)=y, U (0)=z とおくことにより、示しなさい。

6 マルコヴィッツの株式利回りの時系列データ(p.94)から、
   (a) アチソン・トペカ・サンタフェとコカコーラの各株式
   (b) ゼネラル・モーターズとファイアストーンの各株式
の各組み合わせにつき、データを
   i) 時間を横軸にとった折線グラフ(2 社を同一グラフ上で)
   ii) 2 社を横軸、たて軸にとった散布図
で表しなさい。コンピューターによらない場合はできるだけ方眼紙を用いること。できれば ii)にあっては相関係数を EXCEL により計算することが望ましい。
   iii) (a) の組み合わせにつき、比率 (x, 1−x) のポートフォリオの分散の式、および最小分散を与える x を求めなさい。
   (注)データは、http://www.qmss.ne.jp/databank/ にある。

7 問1 の答(赤玉の場合、および白玉の場合)の確率に対し、エントロピー
   H=−p log p−(1−p) log (1−p)
をそれぞれ計算しなさい。どちらが小さいか。またそれは何を意味するか。(log は EXCEL にある。)

※ 今後のレポート第 4, 5 回は、一部試験予想問とします。


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