次の問題を構造化し検討を加えなさい。ニュース解説者あるいは(片方のあるいは双方のあるいは調停・決定の)当事者になった想定と想定してよい。
宝くじの当たり額の期待値は通常その価格の 4 割 5 分程度である。人はなぜ宝くじを買うのか。さらに、買う人と買わない人の両方がいるのはなぜか。
[一つのヒント] 機会損失(機会費用)
ミクロ経済学の消費者行動理論によれば、有料道路は利用の限界効用が利用 1 単位の価格に等しいところまで利用される。通常、限界効用は利用量の減少関数であるから(限界効用逓減)、通行料金アップによって利用量は減少する。しかし、利用者はこの論理に納得するか。
利用されない道路を作る必要はないと同時に、東京都心の「昭和通り」のように、建設当時(関東大震災後)は不必要に広大であったが今では都心の道路システム中では枢要な役割を果たし、建設者(後藤新平)の先見の明が賞賛される例もある。つまり、一般に現在の必要性だけでは最終判断はできないという考え方もある。これらの論をどのように整理、総括するか。
「防衛費の GNP 1 %枠」と類似の問題で、シェリングの「フォーカル・ポイント」の考え方が議論の筋になる。
「同時多発テロ」で考える:
悪しき行為に対して苦痛ないしは不利益を伴わせることによって、人々にその行為を選ばないように仕向ける対策を、一般に「抑止」という。刑罰の本質は「抑止」である。また安全保障でいわれる「侵略に対する核抑止」も、おおまかにはこの「抑止」の考え方に入れてよい。しかし、「抑止」の考え方に立つと、道徳的確信・政治的確信の動機から行われる犯罪(確信犯*、あるいは政治犯という)では、これらの苦痛・不利益はもともと覚悟のうえであり行為計算からは度外視されている。つまり、確信犯に対しては刑罰はそもそも効果をもたないと予想される**。
この関係で、大規模な要人テロ、大がかりな騒乱行為などによる政府転覆は「内乱」と呼ばれるが、それに対する刑罰については多くの議論が可能である。たとえば、死刑は効果を持たないから課すべきではない、政治犯を通常犯罪と同じに扱うのは不正義である、さらに政治犯は事実上未遂しか罰せられないが(成功した反乱者は建国の英雄)、本来未遂は刑法上刑を減軽されるから死刑は理屈にあわない、などである。実は、わが国の刑法では、反乱罪には死刑もしくは禁固刑と定められている。この規定は、死刑はとにかくも禁固刑は懲役刑よりも軽い点、注目される。
これらの議論に対し、「確信犯」はあたかも「尊敬される犯罪」を認める議論であり、「確信犯」という考え自体認められないとする批判がある。
* ドイツの法学者ラートブルッフ(G.Radbruch)によって提唱された。
** フランス革命さなかギロチンの粛清(恐怖政治)が荒れ狂うジャコバン党独裁期に、革命指導者マラー(J. Marat, 1743-1793)を暗殺したシャルロット・コルデー(Charlotte Corday d'Armont)は、穏健派ジロンド党のシンパであった。詩人コルネイユの孫で根っからの王党派であった彼女はかねてよりマラーを「祖国の敵」(マラーは革命パンフ「人民の友」を発行していた)として憎み、ノルマンディー地方から単身パリに出て、コルドリエ街に入浴中のマラーを刺殺した(1793.7.13)。彼女は「私は 10 万人を救うため一人の男を殺した」と語ったが、彼女がギロチン上に処刑されたことはいうまでもない。それは彼女が十分に覚悟していたことであっただろう。