ユークリッド『幾何学原論』

図形のイデア

すべての図形の理想(りそう)

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 第1章概説へ


定義

1 とは、部分をもたないものである。
2 とは、幅のない長さである。
3 線の端は点である。
4 直線とは、その上にある点について、一様に横たわる線である。
5 とは、長さと幅のみをもつものである。
6 面の端は線である。
7 平面とは、その上にある直線について、一様に横たわる面である。
8 平面角とは、平面上にあって互いに交わり、かつ1直線をなすことのない2つの線相互の傾きである。
9 角を挾(はさ)む線が直線であるとき、その角は直線角と呼ばれる。
10 直線が直線の上にたてられて接角を互いに等しくするとき、等しい角の双方は直角であり、上にたつ直線は、その下の直線に対して垂線と呼ばれる。
11 鈍角とは、直角より大きい角である。
12 鋭角とは、直角より小さい角である。
13 境界とは、あるものの端である。
14 図形とは、1つまたは2つ以上の境界に囲まれたものである。
15 とは、1つの線に囲まれた平面図形で、その図形の内部にある1点から、それへ引かれたすべての線分が互いに等しいものである。
16 この点は、円の中心と呼ばれる。
17 円の直径とは、円の中心を通り、両方向で円周によって限られた任意の線分であり、それはまた円を2等分する。
18 半円とは、直径とそれによって切りとられた弧とによって囲まれた図形である。半円の中心は、円のそれと同じである。
19 直線図形とは、線分に囲まれた図形であり、三辺形とは3つの、四辺形とは4つの、多辺形とは4つより多くの線分に囲まれた図形である。
20 三辺形のうち、等辺三角形とは3つの等しい辺をもつもの、二等辺三角形とは2つだけ等しい辺をもつもの、不等辺三角形とは3つの不等な辺をもつものである。
21 さらに三辺形のうち、直角三角形とは直角をもつもの、鈍角三角形とは鈍角をもつもの、鋭角三角形とは3つの鋭角をもつものである。
22 四辺形のうち、正方形とは等辺でかつ角が直角のもの、矩形(くけい)とは角が直角で等辺でないもの、菱形(ひしがた)とは等辺で角が直角でないもの、長斜方形とは対辺と対角が等しいが等辺でなく、角が直角でないものである。これら以外の四辺形はトラペジオンと呼ばれるとせよ。
23 平行線とは、同一の平面上にあって、両方向に限りなく延長しても、いずれの方向においても互いに交わらない直線である。

公準(要請)

つぎのことが要請されているとせよ。
1 任意の点から任意の点へ直線を引くこと。
2 および、有限直線を連続して1直線に延長すること。
3 および、任意の点と距離(半径)とをもって円を描くこと。
4 および、すべての直角は互いに等しいこと。
5 および、1直線が2直線に交わり、同じ側の内角の和を2直角より小さくするならば、この2直線は限りなく延長されると、2直角より小さい角のある側において交わること。

公理(共通概念)

1 同じものに等しいものはまた互いに等しい。
2 また、等しいものに等しいものが加えられれば全体は等しい。
3 また、等しいものから等しいものが引かれれば残りは等しい。
〔4 また、不等なものに等しいものが加えられれば全体は不等である。
 5 また、同じものの2倍は互いに等しい。
6 また、同じものの半分は互いに等しい。〕
7 また、互いに重なり合うものは互いに等しい。
8 また、全体は部分より大きい。
〔9 また、2直線は面積を囲まない。〕