ユーゴー『レ・ミゼラブル』

たった一切のパンを盗んだために.

本書が書かれたわけ.

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 「レ・ミゼラブル」の序

 法律と風習とによって、ある永劫(えいごう)の社会的処罰が存在し、かくして人為的に地獄を文明のさなかにこしらえ、聖なる運命を世間的因果によって紛糾せしむる間は、すなわち、下層階級による男の失墜、飢餓による女の堕落、暗黒による子供の萎縮(いしゅく)、それら時代の3つの問題が解決せられない間は、すなわち、ある方面において、社会的窒息が可能である間は、すなわち、言葉を換えて言えば、そしてなおいっそう広い見地よりすれば、地上に無知と悲惨とがある間は、本書のごとき性質の書物も、おそらく無益ではないであろう。

1862年1月1日

オートヴィル・ハウスにおいて

ヴィクトル・ユーゴー