わが国独特の罫(けい)線による株価の表示
こういう株価過程(株価のランダムな時間的推移)を考えてみよう。実際はこういう具合ではないのだが・・・。
日々の株価は
・ 他の日とは無関連に(独立に)変動する;
・ 株価のアップ、ダウンは期待値0とする;
=> たとえば、±10円の変化が、確率1/2ずつで起こる、
あるいは+30円が確率2/5、-20円 が確率 3/5でおこるなど
・ その日の株価はその日までの過去の株価のアップ、ダウンの和S(累積和)である。
このとき、「株価はマルチンゲールとなる(である)」といわれる。
その意味は以下の通り。今日m月n日の株価がたとえば850円だったとしよう。
このことがわかっているとき、明日n+1日の予想株価(いろいろありうる株価の平均)はいくらになるだろうか。
答:850円
すなわち、この賭けでは誰も得も損もしない、つまり株式市場は公平である。
あるいは、だれも(自分だけの)情報で儲けることが出来ないような市場である。
これはすべての情報が行きわたっているいわゆる「効率的」(efficient)な市場の必要条件と考えられている(ただし、この考え方には実証的立場から疑問も出されている)。
このことを、式では次のようにあらわす;
(*) E (S(n+1)|S(n)) =S(n)
ここで、nは現時点を示し、また | は「条件付き」をあらわす確率論の記号。
この (*) が一般化なマルチンゲールの定義である。
上の例を要約すると、期待値0の独立確率変数の和Sはマルチンゲールである。
したがって、対称単純ランダム・ウォーク、その極限としての標準ブラウン運動はマルチンゲールである(=>シミュレーション)。
『入門確率過程』では6章3節。
「マルチンゲール」ということば自体の意味(語義)は確定した説はない。