D. ウィリアムズ(赤堀次郎、原啓介、山田俊雄訳)『マルチンゲールによる確率論』(培風館、2004)New !
確率論「本来」の入門基礎書で、[24] の訳。筆者はケンブリッジ大学統計学教授。説明の要にして簡略な点、アイデアの出し方など、通り一辺倒の味気ない測度論的確率論(要は測度論であって確率論としては面白くない)とはちがう。さすが、英国風の味のあるゆったりした書き方になっている。この辺は数学的精緻よりは、かっての確率論がもっていた現実的ダイナミズムを引き継いだ統計学の良さが残っている。
マルチンゲールの本格論は後半からなので、「マルチンゲール」を知らねば読めないわけではない。本来は重要なマルチンゲールの一様可積分性に触れているのも、当然とはいえ、類書にない良さである。応用は、BS 公式(軽く触れているところが面白い)のほか、カルマン・フィルタ、「ほどけたハーネス」など、知的で読みたい話題が多い。最後のところで「弱収束」も扱っているところが、確率論の数学的厳密性も忘れない、というわけで好感が持てる。
松原著も本書の哲学と共有するところが多い。第8章まで読んだ後、本書 Part A へ行けば順当に理解が発展してゆく。
D. Rupert : Statistics and Finance. Springer, 2004 New !
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