基礎概念である序数効用と基数効用を学びましょう。そう数学的には高度ではありません。ただし重要なのはこれの用い方で、とくに今後よく出てくる「パレート最適」の概念がいくつかの例で導入されます。
『リヴァイアサン』(ホッブズ)の表紙 国家・国民と政治の関係が象徴されている。絵からも、国家の機能や作用はそれを構成する人民から説明されるという近代政治理論の萌芽が読み取れる。 |
1、2 節はペアです。
はっきりいえば、図 1.1 (つつき順序の有名な例)が順序のほんの一例です。誰が誰よりえらいとか、あれよりこれが好きだとか、おいしいとか、価値があるとかいうのは、すべて順序の例。厳密な定義は巻末の「関係」を見て下さい。順序がある、順序がついているというのは、そこに秩序がある証拠です。もう一度、図
1.1
をみて下さい。なかなか印象的でしょう。動物の社会って大変ですね。
順序でいろいろなことが語れるのですが、リベラル・パラドックスとか、囚人のジレンマの話を少しのぞかせました。こういう状況はよくありますね。さてあなたは道徳家でしょうか。こういう好き者の友達がいたら、このようにこんがらがりませんか。解説はあとにしましょう。
なお、このつつき順序に関連して、「社会生物学論争」を知っておくと視野が広くなるかもしれません。
基数効用というのは、要するに数量で選好をあらわすアプローチです。数にすると曲線がかけるがこれを効用曲線というのです。曲線をざっと眺めておけばよろしいのですが、 経済学のキーターム「限界効用逓減」だけ一つおぼえて下さい。できればその由来である有名なD. ベルヌーイの「聖ペテル(ス)ブルクのパラドックス(逆説)」も。あとは、数学の話はとばしてもよい。第 3 章の 2 節までは知らなくてもよいが、経済をやりたい人は「効用」の語はおぼえておきたいですね。なお、14 ページ最後段落以降はレベル高いので割愛可能です。
ここでは初めて「社会科学」のお話が出ます。皆さんが結構信用している「多数決」というものにもおかしな矛盾があります。選挙や議会制民主主義は果たして大丈夫でしょうか。今世紀の大発見「アローの定理」が出現します。
手始めに、選挙や投票について考えてみましょう。不正な選挙制度は社会にとって大きな災いであるのみならず、それが引き金になって大きな社会的変革(革命)が引き起こされることもあります。そもそも投票で決めることは万能と思われているのですが、トップが敗者だったり、順位付けによっては適切でない決定を導いてしまうことさえありますから、民主主義の社会を支えていくためにも、投票をよく研究するだけの価値はあるのです。
小選挙区制の批判も、それがもっている自己矛盾をつくものでなければ、力をもちえないでしょう。
フランス革命初期の国民公会 右に穏健派、左に山岳派(ジャコバン党)が着席する。これから今日の「右翼」「左翼」の名称が起きる。投票、議会制度、イデオロギーなど「公共選択」の問題は、計量的な社会科学の重要な対象分野である。 |
国際連合安全保障理事会の議決方式(拒否権)
参考) 国連憲章 27 条 |
日本の議会である「国会」(衆議院) そこでの討論から、いろいろな左右イデオロギー分布が観察されることはフランス革命の時と変わらない。 |
社会といえば、「きみはたいした人間ではないので少しくらい不幸になっても、社会としてはこちらの政策のほうが幸福の総量が増えるのでこれで行きましょう」、などという論理がまかり通っていいでしょうか。一人一人の幸福はどのようにして、全体の幸福に反映できる(できない)でしょうか。むずかしいです。「パレート最適」というのはカギことばです。
「宗教的解決」は、日本のような多宗教的文化(習合的文化)の中では大胆なこころみかもしれません。思い切ってコスロフスキーの議論を紹介しました。